私、やっぱり女性ホルモンに支配されてた(1)

更年期にさしかかり、思う。あれもこれも女性ホルモンのおかげだったのでしょうか。
有馬ゆえ 2025.11.21
誰でも
photo:yue arima

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 こんにちは。ライターの有馬ゆえです。

 木々が紅葉し終わらないうちに、気候はすでに冬。皆様、いかがお過ごしでしょうか。こちらは夜が長くなるのが嫌で、11月末にして冬至はまだかと待ちわびております。寒い。

 今回は、産後に書いた「私、女性ホルモンに支配されてた」の続編をお届けします。更年期障害については「私と『更年期障害』の25年」も、どうぞよろしくお願いいたします! 今回はお試しで3回に分けてお送りしますので、レターの長さについてのご意見もお待ちしています。

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 更年期障害を自覚してから1年が経ち、あらためて更年期障害について知るために、産婦人科医の高尾美穂先生が書いた『いちばん親切な更年期の教科書 閉経完全マニュアル』(世界文化社)を買った。正確には、図書館でパラパラ見ていたら「これは長い付き合いになりそうな一冊だ」と直感したので、その日に楽天ブックスで注文した。子どもが小さい頃に『はじめてママ&パパの0~6才病気とホームケア』(主婦の友社)という本を重宝したものだったが、その更年期版、という気がしたのだ。

 1年前、私は自分の身に起こりつつある症状について理解したいと思い、更年期に関する本を何冊か読んだり、テレビ番組の特集をいくつか観たりした。しかしそれから1年経ち、以前とは違う情報が目に飛び込むようになっていた。

 例えば、以下の箇所。エストロゲンとは、2つある女性ホルモンの一つである。もう一つは、プロゲステロンという。

 また髪の毛一本一本の太さと髪の毛の密度を維持してくれるのも、エストロゲンの働きです。更年期以降、髪の密度が低下して薄毛が気になってくるのはエストロゲンの量が激減することが原因です。同様の変化は、実は産後にも経験される方が多いです。
高尾美穂『いちばん親切な更年期の教科書 閉経完全マニュアル』(世界文化社)

 午前中のあたたかな図書館で、最後の一文を読んだ私は内心で「思ってた!」と叫んだ。まさに少し前から、浴室で毎度指に引っかかるたくさんの髪の毛を見て「産後みたいだな~」と悲しくなっていたのだ。「みたいだな~」どころか、同じことが起きていただけなのだった。

 それだけではない。同書によれば、いくら保湿しても潤わない顔の皮膚や、すぐ乾燥してかゆくなる身体だけでなく、カピカピになりがちな鼻の穴も、イガイガしがちな喉の奥も、午後になると乾きはじめる目も、たまに襲ってくる性器周りのむずがゆさも、エストロゲンによるコラーゲンの産出が減ったせいだというのだ。最近増えつつある白髪も、エストロゲンの減少と無関係ではないらしい。

 私は悟った。私の身体はこの歳になってさえ、こうも女性ホルモンに操られていたのだ。妊娠・出産の記憶が薄れ、生理があまり来なくなり、排卵痛もほぼなくなり、すっかり忘れていた。理性で自分をコントロールしているかのような錯覚に陥っていた自分を恥いる。

 ずっと閉経を心待ちにしていた。月経というわずらわしい習慣や月経痛、排卵痛などの症状、ホルモンバランスの乱れによる心身の乱れがなくなることはもとより、自分が性別から解放されるような気がしてうれしかった。

 しかしながら、問題は健康面である。

 身体の潤いは、ただ肌がきれいだとか、髪がつやつやしているとかいうだけでなく、涙が適切に出てゴミやほこりなどから眼球を守ったり、喉や鼻の中が潤いで満たされてウイルスの侵入を防いだりすることにもつながる。ほかにもエストロゲンは、コレステロール値を下げたり、関節の動きを柔軟にしたり、骨を強く保ったり、メンタルを安定させたり、脳の機能を維持したりすることにも関わっているらしい。

 反対に言えば、生殖機能を失うと、生きることはここまでシビアになっていくということだ。普段はつい忘れてしまうが、人間とは所詮動物なのであった。寿命を延ばしたのが人間の叡智であるとしても、生殖に適した年齢を超えてなお生きるのであれば、人間らしく知恵を絞って努力せねばならないということか。

<参考文献>

高尾美穂『いちばん親切な更年期の教科書 閉経完全マニュアル』(世界文化社)

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bonyari.scope@gmail.com


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