東村アキコファン親子の宮崎旅行(1)――宮崎おぐら編

宮崎に行ってきたよ。photo:yue arima
こんにちは。ライターの有馬ゆえです。もう6月だ。
今回は、3月に行った宮崎旅行について聞いてほしい。地味で長めのな旅行記ですが、しばしお付き合いください。
「本物のチキン南蛮が食べてみたい~」
小学校に上がるぐらいの頃、子どもがこう言い始めた。きっかけは、東村アキコ先生の『ひまわりっ!~健一レジェンド』(講談社)だった。
この作品は、アキコ先生の会社員時代をモチーフにしたギャグマンガで、その舞台である先生の出身地・宮崎県の文化が数多く描かれている。子どもはそこから「本場宮崎のチキン南蛮は、東京で食べられるチキン南蛮とは違ってすごくおいしいらしい」「チキン南蛮は『おぐら』という店が発祥らしい」「使う鶏肉はムネ派とモモ派がいるらしい」などの情報を学んだのだった。
子どもは、幼児期に私の本棚から『ママはテンパリスト』(集英社)を抜き取って以来、アキコ先生の作品を繰り返し眺めるようになった。特にギャグ作品が好きで、今でも毎日のように何かの作品を手に取り、ときにキャラクターを憑依させて遊んでいる。文字が読めるようになるまでは読み聞かせもせがまれ、子どもはひざの上や布団の隣でギャハギャハ笑い転げていた。
アラサーの頃、編プロで激務に立ち向かう私を支えてくれた作品たちが、時を超えて子どもの日常的な娯楽になっていることがうれしい。
そんな私たちの宮崎旅行計画は、アキコ先生の小学生時代をモチーフにした日常系ギャグマンガ『まるさんかくしかく』(講談社)に背中を押される形で始まった。この本を愛読しすぎた我が子は、マンガに描かれる宮崎の食に対して、これまで以上の興味を示すようになり、日常で宮崎弁を使ったり、日向ひょっとこ踊りを踊ったりするようになっていた。
そんな子どもを見て、私は「宮崎、行くしかないっしょ!」と思ったのである。不登校も一段落したし、思春期に入ったら家族で旅行してくれるかわからないし、私も本場で宮崎名物を食べてみたいし!
そうして楽天トラベルで宮崎駅前のホテルと航空チケットを確保したのは1月後半。なのに気づけば、いつのまにか、出発の日は1週間後に迫っていた。
まったくのノープランでここまできたことに焦ったところで、「旅程はAIで組んでもらうと便利だって聞いた!」とひらめく。しかし残念ながらCopilotもGeminiもClaudeも私以上の情報を集めてきてはくれず、仕事の合間にマンガをチラ見しながら自力でプランを立てることにした。インターネット上には、AIが拾って分析できるほどの量がない情報もまだあるのだ。
今回の旅の主目的は、マンガに登場する食べ物のうち、子どもが食べたいと思ったものを食べることである。食べたいものをうまく三食に織り込みつつ、その合間にゆるく観光もする、そんな3泊4日になればいいと思っていた。
1日目、おぐら本店でチキン南蛮
3月27日(金)。1日目は、ほぼ移動の日。羽田空港で早くも赤福の特別販売会に「赤福だ! 食べてみたい!」と興奮する子どもを「帰りにしよう」と説得し、13:20の便に乗り込む。

飛行機の窓から富士山が見えて興奮。photo:yue arima
憧れの宮崎ブーゲンビリア空港に到着後、まずは空港内の「ドリンクスタンド パーム」でおやつ。窓の外に並ぶフェニックスの木々に「マンガで見た!」と興奮しながら、家族でマンゴーアイスを食べる。フェニックスは宮崎県の木の一つ。

マンゴーアイスの写真がなくてごめんよ。photo:yue arima

これがフェニックスの木。ヤシ科です。photo:yue arima
初日のお目当ては、おぐら本店のチキン南蛮。宮崎県民のソウルフード・チキン南蛮発祥の店として知られるおぐらは、チキン南蛮にタルタルソースを合わせることを考案した甲斐義光さんが1956年に創業した老舗レストランだ。

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おぐら本店は、宮崎駅から15分ほどの場所にあるデパート宮崎山形屋の裏手にあって、知らなければスルーしてしまいそうなぐらいこぢんまりしている。到着した17時半頃にはすでに行列ができており、私たちは30分ほど待ってから店内へ案内された。

外国人の方の後ろに並んで待つ。フランス語を話されていた。photo:yue arima
そして待望のチキン南蛮とご対面~! 本物だ~と親子で感動する。見た目のすごいボリュームに一瞬ひるんだが、甘酢とタルタルソースの組み合わせが信じられないほどおいしくて、あっという間に食べきってしまう。みじん切りの野菜が入っているせいか、タルタルソースは意外とさっぱり。子どもに二切れ分けたが本当は分けたくなかったし、旅行中、もう一度行けばよかった。それぐらい癖になるおいしさだった。

美しい~! 翌日もう食べたくなった。photo:yue arima

ハンバーグとチキン南蛮がセットになったお子様ランチ。子どももこれをもう一度食べたいそう。夫はこれの大人バージョン。photo:yue arima
ちなみに、おぐら本店と瀬頭店の「味のおぐらチェーン」は二店舗あるのだが、宮崎県内には「延岡おぐら」の経営する「味のおぐらチェーン」三店舗もある。延岡おぐらのホームページによれば、これらは別物で、1992年に創業者兄弟が分社して長男が延岡のおぐら、三男が宮崎のおぐら(おぐら本店と瀬頭店の方)を経営することになったらしい。次男はどこに行ったのか気になる。
また先日、ABEMAの恋愛リアリティ番組『今日好きになりました』に出演していたいおうくんのご家族が「おぐらきんなべ」というを経営されていることを知ったのだが、こちらは宮崎のおぐらで修行したシェフ黒木敬三さんが総料理長を務めており、延岡おぐらに許可を得て開業したらしい。複雑~! 蛇足だけど、黒木さんは宮崎に多い名字だって、私知ってる。
2日目、青島に行こうとするも
2日目は、宮崎のビーチリゾート・青島へ。青島は『まるさんかくしかく』にも登場する観光スポットで、子どもは小学生時代のアッコちゃんが休日に青島に行って食べたり遊んだりするエピソードが大好きなのである。
宮崎駅から青島まではJR日豊本線とJR日南線を乗り継いで30分程度。私たちは午前中から青島へ向かい、好きなだけ食べたり観光したりして、夕方に宮崎駅前に戻ってくるというプランを立てていた。
9時過ぎ、外に出ると東京よりずっとあたたかい。さすが宮崎、「日本のひなた」を謳うだけある。
宮崎あたりの地域は古代から「日向(ひむか)」と呼ばれていたといわれ、現在も日照時間や快晴日数が全国トップクラスだという。マンゴーや日向夏、ピーマン、キュウリなどが取れたり、畜産が盛んなのも、温暖な気候のおかげだそうだ。

町中にもフェニックスの木。photo:yue arima
ホテルから駅まで向かう道すがら、子どもが急に「わらびだ! 初めて見た!」と興奮して手足をジタバタとさせた。指さす方向を見ると、道ばたの雑草にまぎれてシダ植物系のくるくる巻いた若芽が顔を出している。わらびは宮崎名物ではないが、『まるさんかくしかく』5巻で、お花摘みをしていたらそこにいたおじいさんに命じられてわらびとつくしを摘んで持って帰ることになった……というエピソードがあるのでうれしかったらしい。
都会ではなかなか見られないもんね~と言ったものの、もしかしたら普段私たちが注意深く足下を見ていないだけかもしれない、とも思う。

あとで調べたらわらびではないっぽい。ゼンマイかな? photo:yue arima
しかし、さっそくここでアクシデントが。駅までの道をのんびり歩きすぎたせいで電車に間に合わず、1時間後まで時間を潰すことになり、さらに1時間後のその電車で乗り換えを間違うというミスを犯したのである。
日豊本線から乗り換えなしの直通運転だと思い込み、南長崎駅で下車するのを忘れて談笑していた我々。「いまどの辺かな~?」と、たまたま開いたGoogleマップで自分たちがどんどん海から離れて行く様子を目にした絶望感は忘れられない。焦ってパニックになる私。「どーしてくれんだ」という子どもの顔。平静を装う夫。
あわてて日向沓掛という駅で電車を降り、駅員さんもいない幅の狭いホームで三人立ち尽くす。

細い。photo:yue arima
上りホーム側には雑木林、下りホーム側は急斜面の向こう側にビニールハウスが並んでいる。どこかでうぐいすがホーホケキョと鳴き、雑木林の足下に咲く菜の花にはモンシロチョウとモンキチョウがひらひらと飛び回っていて、あまりののどかさに「春だねえ」と和んでしまった。

「良いとこに来たな~」とすら思った。photo:yue arima
しゃがんでスマホをいじっていた夫が、「10分で反対方向の電車が来るよ~!」と教えてくれる。
ビニールハウスでは何を育ててるんだろうね。斉藤くん(『まるさんかくしかく』に登場する同級生)ちみたいにキュウリかな? トマトかな? などと話していると、夫の言葉通り電車はやってきて、私たちは気を取り直して青島に向かうことにした。


次回は青島編です。photo:yue arima
(次回へ続きます)
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