食べ物絵本と図書館仕事

食べ物の絵本は意外にたくさんある。3日に1回、図書館に借りに行ってもまだ尽きない。こどものともの最新刊「おやつどろぼう」もかわいいよ!
有馬ゆえ 2021.07.16
誰でも

こんにちは。

長かった悪天候シーズンが終わりそうでホッとしています。つ、つ、ついに梅雨明けの予感だ~! 衣服が傷もうとも、太陽光で毎日洗濯ものをバリバリに乾かしたい! 早く春先まで使っていた毛布を洗いたい! 「もう洗うものないの~?」と部屋をつぶさに点検したい! それが夏の醍醐味だ~! と叫びたい。

さて今回は、ここ1、2カ月でめっきり楽になった図書館仕事について。ギラギラ太陽に照らされながら図書館に日参している理由。

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子どもが幼児期にさしかかったぐらいから、2つの区の図書館を使って、予約して、受け取る、サイトで空いた予約枠を埋める、返却する、受け取る、サイトで空いた予約枠を埋める、というサイクルを繰り返している。この図書館仕事が、地味に忙しい。

特に時間がかかるのは、予約する絵本選びだ。絵本ナビなどをザッピングして面白そうな本を見つけたら、各図書館のサイトで蔵書があるかを調べ、あれば予約する、なければもう一方の図書館のサイトで検索する……という作業を予約限度の20冊が埋まるのまで続けていると、あっという間に2時間は経過してしまう。途中で情報疲れしてやめてしまうこともしばしば。

しかし最近、絵本選びがぐぐっと楽になってきた。なぜか。Amazonでそのとき見ている本が指定した図書館にあるかを調べられる「その本、図書館にあります」というGoogleChromeの拡張機能を活用したり、図書館のサイトで新刊絵本を上から順に予約カートに突っ込んでいったりというテクニックを身につけたのもあるが、一番の理由は私が子どもの好みをつかんだからなのだと思う。

あるとき気づいたのだ。「この子、食べ物の本ならなんでもよろこぶわ」と。

我が家の5歳児は、かなり食に貪欲だ。好き嫌いはもちろんあるが、基本的に食べることが大好きで食欲旺盛。保育園では給食を減らすことはほとんどなく、家でも大人顔負けの量を食べた挙げ句にデザートとしてちくわやバナナをオーダーする。朝、おにぎりを出せば「お父さんのほうが大きい」と、夫用の巨大おにぎりを奪い、完食する。ここ1、2年、パン屋で昼食を買う際は、山型食パンなど家で切って食べるような大きなパンをもりもり食べるのにハマッている。半分は残せという母の小言はもちろんうるさがっている。

大好きな肉が食卓に並べば、牛肉の美味しさに目を輝かせ、豚の脂身を「おいしいふわふわ」と表現し、鶏肉はもも肉と胸肉を厳しく見極める。野菜も好きで、乳児の頃には夫婦との間で「ブロッコリーたべよ~♪」「I wanna corn♪」という2曲が作られたほどである。現在は、ブロッコリー、にんじん、とうもろこし、カボチャ、さつまいも、キュウリ、プチトマトがあれば機嫌は良好。その他、炭水化物とおおよその果物、練り物も好んで食べる。

季節で言えば、ごひいきは夏の食。特にスイカとブルーハワイのかき氷が好きだ。スイカは常に皮1mmぐらいまで食べ、お皿の汁は完全になめとる。暑くなってくると虎視眈々とかき氷を食べるチャンスをうかがい、夏の終わりには来年のかき氷を早く食べたいと言い出す。

家でも外でも、食べ物の匂いがすればすぐに嗅ぎつけ、「○○のにおいがする~おいしそ~」とうっとり顔。休日はおやつのために公園に行く時間をコントロールし、趣味の制作ではスイーツがらみの絵を描いたり、ケーキやマカロンを粘土で作ったり。100均で買った生クリームのように絞り出せる紙粘土を見せたときには、テンションが爆上がりしていた。将来の夢はケーキ屋さん。みんなの笑顔が好きだから。子どもは利他的である。モデルとアイドルになってケーキ屋の集客率を上げるという計画もあるらしい。

街ゆく人の食べ物事情にもめざとい。先日は、保育園の行き道でコンビニから出て自転車に乗り込むおじさんの袋の中身をチラリと見て、「お菓子いっぱい入ってたね」とうらやんでいた。さらに、自らのおやつパーティーの妄想を膨らませていた。

そんな彼女が、食べ物の絵本を好まないはずがない。もっと早くわからなかったものかと自分でも思うが、以前は彼女の食へのこだわりを「自分が好きなものを食べたくない子どもはいないだろう」と見過ごしていたのである。

「食べ物」という軸は、単純に検索ワードを見つけやすくしただけではない。大きく変わったのは、実は図書館での本探しだ。

情報処理の苦手な私は、無秩序な情報を見続けていると頭が混乱してしまう。Twitterのタイムラインなんて3分見ているだけで気分が悪くなる。だから、あらゆるジャンルが入り交じる図書館の絵本コーナーは、気が重くなる場所だったのだ。

しかし、どうだろう。ルールを決めた途端、絵本コーナーに行くと、本の背にある食べ物ワードが目に飛び込んでくる。絵本が「俺も!」「俺も!」と自らアピールしてくるようで、「おう、お前もか!」などと心でつぶやきつつ、勝手に彼らと通じ合うている感まである。

「私、この絵柄好きじゃないなぁ」「文字が多くて最後まで読めないかも」といった自分の声をまるっと無視して、「これ娘の好きな食べ物だから借りとこ」と子どもの軸で借りられるのも最高だ。自意識からの解放。自分の意見を差し挟む悪癖が働かず、とても自由だ。そして何よりも、食べ物絵本は娘の食いつきがいい! 

すっかり絵本コーナーでの本選びが楽しくなった私は、毎日のように図書館に足を運んでいる。おなじみの野菜や果物、お弁当、サンドイッチ、おにぎり、ハンバーグやカレー、ギョウザ、揚げ物、うどん、おもち、焼きそば、たこ焼き、せんべい、ケーキやゼリー、パフェ、チョコレート。なんとマシュマロやまめざらを取り上げた本まであるのだぞ。こんな楽しい世界に出合えて幸せだ。

きっと、借りてきた本を見た娘の「新しい本だ~!」という声が聞けるのも、あと数年のことだろう。図書館絵本のご提供は、親にとって期間限定のぜいたくなお仕事なのだ。大量の絵本はマジでマジでマジでマジでマジで重いが、娘の心が弾み出すあの瞬間に立ち会いたくて、私は今日もよいしょと重たいリュックを背負うのである。

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