過敏な鼻(1)

写真は、がんばって見つけた“大丈夫な香り”のエコストアの洗剤。苦労に見合わないので、「意識高いね」とか言われるのは不本意です。
有馬ゆえ 2022.09.16
誰でも
photo:yue arima

photo:yue arima

こんにちは。ライターの有馬ゆえです。

空から入道が姿を消し、代わりに羊たちの群れがやってきて、いよいよ秋! 皆さんの秋の楽しみは何ですか? 私にとって秋はマロンペーストの季節。どこにいっても、マロンパフェやモンブラン、マロンを使ったケーキやタルトがあって天国です。ぐいっと栗が主張するややざらついたマロンペーストが好み。今年も積極的にむさぼっていきたい所存です。

さて今回は、人となかなかわかちあうことのできない鼻の感覚について書きました。同じような感覚をお持ちの方は、ぜひお知らせください。エアーで抱き合いたい!

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仲よくなったイラストレーターの人とメールをしていて、刺激に弱いという話から、「保育園から帰ってきた子どもに、園で使っている洗剤の香りがついていてつらいんです」と打ち明けたら、「私も、子どもが小学校から持ち帰ってた給食着に、その前に給食当番をした子の家の柔軟剤の香りがついていてつらいんです」と返信がきて、「あなたもでしたか!!!」とエアーで抱き合ったことがある。なかなか理解されない感覚をわかちあい、うれしかったのだ。

過敏な鼻を持っている。

鼻がいい、と勘違いされるのだが、鼻がいいというのは、さまざまなにおいを嗅ぎ分ける能力があるということだ。

過敏な鼻は、嗅覚が過度に鋭いため、においを刺激として感じすぎる。とくに強い香りや刺激臭、人工的な香りは、感知するや、鼻の穴の前でそれを噴霧されたかのような猛烈な勢いで鼻腔を突き刺してくるのでダメージが大きい。むかむかと気持ちが悪くなって、できればちょっと横になりたくなる。

そのため、身の回りにおくものは可能な限り嗅覚を刺激しないものがいい、ということになる。洗濯用洗剤を含む石けん類、シャンプーやトリートメント、ヘアケア剤、スキンケア用品、メイク用品、日焼け止めといった日用品は、自ずと無香料、あるいは好きな微香のものなど「大丈夫な香り」であることが重要だ。なんといっても毎日使うのだ。

しかしながら、日々は危険に満ちている。ベランダで洗濯物干しをしていると、風に乗ってやってくるほかの家の洗剤の香りがつらい。どうか我が家の服やシーツに付かないでくれ、と祈りながら、スーハーと口で息をしながら洗濯物を干す。

子どもの通う小学校では、学校公開の日などにPTA主催で体操着や水着のリサイクルコーナーが設けられ、重宝しているのだが、その場で布のへたりや毛玉、シミの程度を見ることはできても、鼻を近づけるのははばかられる。結局、もらってきた体操着のにおいが強すぎて、またリサイクルに出すという無駄な工程が発生したりもするのだ。

香りは、購入して使ってみないとわからないのがつらい。商品に書いてある「フローラルの香り」といったざっくり説明はもちろん、店頭の香り玉でもその洗剤を毎日使ったときの心境に至ることまではできない。

日用品が商品リニューアルで香りが変わると、それはもう一大事だ。

Amazonで、独身時代から愛用していた液体洗剤「アタックNeo抗菌EX」の香りが変わったというレビューを読んだときは、目の前が真っ暗になった。そのまま950gの大容量詰め替えパックをあるだけ(10個以上)買って1年半ほど粘ったが、ついに洗面台下の在庫が尽き、仕方なくリニューアルしたものを購入。だが香りに耐えきれず、不快感と良心の呵責の板挟みで「嫌だけど捨てたくない」と夫に泣きついたら、「我慢してまで使う必要はない」とのご回答。その通りだが、君は知っているのか、ほとんど買ったばかりの洗剤を下水道に流すかなしみを。

どぼんどぼんと音を立てて洗剤を流しながら、みんなが使える物を使えない自分のだめさを思い知らされているような気がする。お金を払って不快な時間を買う私ってなんなんだ。あーあ、海洋プラスチックが問題だって言われているのに、用もないのに水を汚してごめんなさい、無駄な水道の濾過をさせてごめんなさい、万が一、魚たちに届いたらごめんなさい、と心で唱える。

その後、同じかなしみを味わうぐらいなら、とコスパは気にせずエコストアの「ランドリーリキッド<ユーカリ>」の量り売りを利用することにした。すきっとした香りが好きだし、サステナブル心も満たされるのが気に入っている。

ドライクリーニングは「ウタマロリキッド」を暫定的に使っているが、エコストアでサンプルをもらったので試してみようと思っている。大丈夫な香りの製品が少ないだけに、気を許せるメーカーのサンプルは「限りなくあたりに近いものを試せる」というわくわく感がある。

出産と加齢の変化に応じて、シャンプー&トリートメントを変えるのには、3年以上かかった。肌や髪に合っていて、日常遣いできる価格で、しかも好きな香りのもの、なんてなかなかない。数字上のコスパやネットの口コミに飛びつき、期待を裏切られて排水溝に流す、を繰り返した挙げ句、気軽に買えるドラッグストアの150円ぐらいのシャントリサンプル大好きおばさんになっている。

苦労して手に入れた定番品は、生活の安心材料だ。大事に大事に使っていきたいが、残念ながら商品も私も変わる。そのたびに右往左往するのだろうが、まあ、これもまた人生か。

(次回に続きます)

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今回も、読んでくださってありがとうございました。

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